生産者: Louis Roederer / ルイ・ロデレール
ワイン名: Louis Roederer Cristal Brut / ルイ・ロデレール クリスタル ブリュット
葡萄品種: Pinot Noir 60% Chardonnay 40% / ピノ・ノワール 60% シャルドネ 40%
ワインタイプ:シャンパーニュ
生産国: フランス
ヴィンテージ:2008
インポーター: エノテカ
参考小売価格:\38,000 (750ml)
シャンパーニュにとって、傑出したグレートヴィンテージと評される2008年。
もちろんこのルイ・ロデレール クリスタル ブリュットも例外ではありません。
今回の私のコラムの性質上、ルイ・ロデレールのその偉大な歴史や多くの説明は省きますが、その中で一つ取り上げられることは、ルイ・ロデレールは「完璧なブドウの持つポテンシャルを最大限活かす」という信念によって、自社畑から採れたブドウは常にノン・マロラクティック発酵を実施しているということです。
マロラクティック発酵はワイン中の鋭角的な酸(リンゴ酸)をソフトな酸(乳酸)へ変える作用であり、そのマロラクティック発酵を行わないということは、ブドウのフレッシュな果実味と酸を保ちながら長期間かけてゆっくりと熟成させることとも言えます。
多くのメゾンがマロラクティック発酵を採用する中、ルイ・ロデレールのようにあえて行わない代表的なメゾンとしては、ランソン、クリュッグ、サロンなどがあげられます。
また、ジャック・セロスについては、マロラクティック発酵をするもしないも自然に任せるという独特なスタンスを取っています。
しかしながら、マロラクティック発酵を行わないことで、その酸を落ち着かせるためには長い期間瓶熟成が必要となりますので、マロラクティック発酵を行っていないリリース直後のシャンパーニュ、あるいは2008年のように傑出したヴィンテージのシャンパーニュには、時折「硬い」印象を持つこともあります。
そこでですが、一度シャンパーニュを開封し外気を取り入れた後、また元通りコルクを打ち直すという「遊び」のご提案です。
ワインの芳香成分を引き出す目的で、数時間前、あるいは前日に開封する手段はスティルワインで目にすることも多い手法ですが、いかんせんスパークリングワインに関しては、例えストッパーをしていても開封後の時間経過によって、泡が抜けていくというリスクが付き纏います。
ただ、私の体感ではコルクを打ち直すことによってシャンパーニュの芳香成分を引き出しつつ長時間フレッシュな泡を保つことが可能と考えます。既存のシャンパーニュストッパーよりもコルクの方が泡を保つことについては優れているのではないか、とか思ったり。
ただしコルクを打ち直すことは安易ではなく、シャンパーニュの製造過程において用いられるようなコルクの打栓機など普通は所有してませんから、開栓後に傘が開いてしまったコルクをまたどうにか打ち直すことになります。結果、その過程でコルクを多少削ったりする必要も出てくることもあるでしょうが、元気なコルクであれば打ち直した後にまた広がってくるので大丈夫、だと思っています。また、ボトルの中で再度気圧が高まり、コルクが飛び出す恐れもありますので、そうならないようしっかり固定して保管する必要もあります。
(留め金を捨てないように!)
ただこの方法、ジャック・セロスについてはあまりお勧めしません。ジャック・セロス
は前述した通りマロラクティック発酵も自然に任せるという製法をとっていますし、経験上このシャンパーニュはボトル一本一本に明確に違うキャラクターがあり、開けてみないとその状態が分からないからです。何度か早まって開けたが想像より熟成が進んでいた、なんてこともありました。
最後に改めて、シャンパーニュにとって2008年は傑出したヴィンテージと名高いですが、ルイ・ロデレール クリスタル ブリュットの現行ヴィンテージは2008年から2012年に移行し2008年は市場から消えつつあります。もし見つけたら、お買い求めいただくことをお勧めします。
そして、この素晴らしいシャンパーニュで、もし前述した遊びをお試しになる際は、寛大な気持ちでw、かつ真剣に遊んでいただきたいです。
<ソムリエプロフィール>
山本 隆裕 / Takakhiro Yamamoto
1977年静岡生まれ。名古屋と東京の様々なバー、及びレストランにてソムリエとして研鑽を積む。
2020年より株式会社SUGALABO入社、S 支配人を務める。