気候変動と温暖化が猛威を振るう中、アルザスの輝かしいGrand Cruは、その栄名に見合った魅力を発揮し続けることができるのか。
私がAlsace Grand Cruの特集を組んだのは、極私的な疑問がきっかけだった。
改めてアルザスと真摯に向き合い、膨大な数のGrand Cruに関する記憶と記録を辿り、現在の酒質を確認し続ける中、私は確信に至っている。
このままではダメだ、と。
いや、正確に言うと、今この瞬間はまだ、問題ないどころか、品質は限りなくピークに近い領域へと到達している。
端正な辛口、という古い価値観に縛られさえしなければ、現在のAlsace Grand Cruは総じて、歴史上最高品質にあるとすら言えるだろう。
しかし、おそらく、いやほぼ間違いなく、ここがピークだ。
これ以上温暖化が進めば、いかにGrand Cruといえど、決壊したダムのように、急速に崩れていくことは避けられないだろう。
Part.2の冒頭では、糖度を基準にした追加表記に関して深く言及したが、本稿では認可品種の再選定と、アッサンブラージュの是非について、追求していく。
筆者が考えるアルザス救済の決定的な手段こそが、品種の見直しとアッサンブラージュだからだ。
認可品種の改訂
Alsace Grand Cruの数と広さに対して、厳しい調整が入る可能性は、限りなくゼロに等しい。
つまり、(現在ではGrand Cruの一部となっているが)歴史的に周知されてきたオリジナルGrand Cruのすぐ外側のエリアで成功している葡萄が、Grand Cru評価の中に混在してしまっている状況は、数と広さという問題点からは変えられない。
であれば、AOC規定を変更することによってしか、Grand Cruがその価値を維持できる道筋は、見えてこないのでは無いだろうか。
そのヒントとなるのは、フランスにある他の銘醸地かも知れない。
例えば、ブルゴーニュ。
ブルゴーニュにあるGrand Cruのうち、ピノ・ノワールとシャルドネの両方が認められているのは、MusignyとCortonのみだ。しかし、両者共に、白ワインがそのステータスに相応しいかについては、大きな疑問が残る。
アルザスとブルゴーニュを完全に同列で語るのは難しい側面もある(主に、アルザスのクリュが広いことと、傾斜が強いために土壌組成がモザイク化しやすいため。)が、基本的に一つのテロワールで、複数の品種が「単一品種」ワインとしてその真価を最大限に発揮できるケースは稀となる。