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最強のワイン保存ガジェット、Coravinの進化と多様化

古くはVacu Vinに代表される瓶内の空気を抜く方式のものから、比較的新しいものではPulltexのような瓶口に被せるだけのものまで、ワインをできるだけ長く保存させるための「ガジェット」は数多く開発されてきた。


私自身も様々なものを使用してきたが、ワインプリサーヴァーの絶対王者は、なんといってもCoravinである。


コルクを抜くことなく、中空状の細い針を突き刺して、ガス注入しつつワインを抽出するこの革命的ガジェットは、家庭でのワインの楽しみ方に留まらず、飲食店におけるワインサーヴィスを根底から覆してしまえるほどのインパクトと、高性能を誇る。


正しい使用法(*)を守れば、数年間ワインを(経年変化を超えない範囲で)酸化させることなく保存することができる異次元の信頼性によって、Coravinは飲食店で数百種類のグラスワインを提供することすら可能にしてしまうのだ。


*:使用した日は必ず、温水で洗浄する。Coravin使用前に、必ず一度ガスを噴出させる。Coravinで抽出したボトルは必ず水平にしてセラー管理を行う。


久々に再会したCoravin開発者のGreg Lambrechtは、6年前にCoravinで抽出した2012年ヴィンテージのブルゴーニュを持参していた。


テイスティングの結果は「もはや分かっていた」ことだが、その味わいはヴィンテージから12年経過した素晴らしいブルゴーニュ以外の何ものでもなかった。



さらにGregからは、気になっていた新たなラインナップの詳細を伺うことができたため、SommeTimesにてレポートさせていただこう。


Coravinのファーストモデルである「Model C 1000」が発売されたのは2013年。それから11年間の間に主力モデルは「Coravin Timeless」と名を変え、現在はThree+、Six+(基本的にこの2モデルの違いは、外装と価格)、そしてアプリと連動ができるElevenの3モデル展開となっている。


針は用途と機能によって4種類にまで増え、スクリューキャップに対応した特殊なキャップや、簡単に装着できるエアレーター(Coravinで問題となりがちなコルク欠の混入も防げる)など、アクセサリー類も充実の一途を辿っている。


そして、従来のCoravinでは対応できなかったドリンク(及び瓶等の形状)に対しては、Coravin Pivot、Coravin Sparklingという2つの新しいモデルでカヴァーできるようにもなった。



まずは、Coravin Pivotから見ていこう。


Pivotは廉価版Coravinと思われているかも知れないが、それは大きな誤解だ。


Pivotの開発が始まったのは2014年。


ドイツで開催されたワインフェアにて、Coravinの出典ブース近くに、日本酒の蔵元が出典しており、彼らから日本酒に対応したCoravinの開発を頼まれたことがきっかけとなったそうだ。(日本に在住していたことがあるGreg自身も、日本酒の愛好家である。)


コルクでもスクリューキャップでもない日本酒特有の瓶口に対応させるため、専用のキャップと、新たなシステムを搭載したを開発した結果、同じくCoravinを使用できなかったVinolok(ドイツ、オーストリア産のワイン等で多い、ガラス栓)にも対応できるようになった。


つまり、従来のCoravin Timelessと、新しいCoravin Pivotではそもそも使用用途が異なるのだ。


最も香気の飛びやすい生酒で数多くの検証を行ったところ、3年程度は問題なく抜栓直後のフレッシュさを保つことができたとのこと。(当然、冷蔵庫管理は必須であり、経年による変化はCoravin Timelessと同様に生じる。)


香気成分を保ちつつ、緩やかな熟成の妙も好きなタイミングで楽しめるのであれば、日本酒の飲み方に、新たな方法論が誕生することになる。



次は、Coravin Sparkling


ガス注入によってスパークリングワインを長持ちさせるガジェットはこれまでにも登場してきたが、最新のプロダクトを含めても、正直なところ数日間プラスで泡を維持できる程度の印象にとどまってきた。


Coravin Sparklingに関しては、Coravinが半端なものをリリースするわけはない、と思ってはいたものの、本体価格が高く(定価税込¥88,000)、自身で試す機会はなかったので、Gregから直接話を聞けたのは本当に良かった。

 

GregとCoravinの開発チームは、数え切れないほどのスパークリングワイン(シャンパーニュに限らず)で実験を繰り返した結果、瓶内を4.5気圧に維持することが理想と導き出し、あらゆるタイプの瓶口に対応でき、完璧な密閉力と抜栓時の静音性を兼ね備えた専用キャップを開発、気圧が正しい状態になったことを表示するインジケーター(所用時間約2秒)なども搭載し、満を持してCoravin Sparklingをリリースした。

 

プロセッコやペット・ナットなどの弱発泡タイプなら1ヶ月強、シャンパーニュレベルの強発泡タイプであれば、少なくとも3ヶ月間は抜栓直後と何ら遜色ない泡の強さと味わいを維持することができるとのこと。

 

もちろん、非常に緩やかな酸化による味わいの変化を防ぐことはできないが、発泡の維持というだけの話であれば、強発泡タイプなら1年を超えても問題ないそうだ。

 

さらに、Coravin Sparkling専用のカプセルは二酸化炭素のみ(アルゴンと二酸化炭素を混合すると、効果が劇的に落ちる)となっている。二酸化炭素は、液体のままカプセル化できるため、一本のカプセルで最大7本のスパークリングワインを充填できるとのこと。

 

つまり、イニシャルコストは高いが、ランニングコストが低い、ということだ。

 

まさに、ゲームチェンジャーである。

 

Gregの話を聞いていると、Coravin Sparklingをフル活用したシャンパーニュ・バーを自身でやってみたい、という妄想まで膨らんでくる。

 

Coravin Sparklingさえあれば、Dom PelignonやKrug、Cristalなどの高級シャンパーニュを、複数ヴィンテージの垂直セットとして提供することすら、全く非現実的ではない。

 

当然、レストランを悩ませるスパークリングワインのロス問題が、完全に解消されることは言うまでもない。

 

やりたくてもできなかったことが叶えられる。

 

Coravinのある世界には、無限の夢が広がっているのだ。



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