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未来のワインリストを考える(前編)

2022年2月、Wine spectator誌のRestaurant Awards(ワインリスト賞)にエントリーするため、ワインリストのスペルチェックやメンテナンスを行っておりました。


Wine spectator’s Restaurant Awardsは、1981年にスタートした、40年以上の歴史を持つAward。


毎年10ヵ国以上、約2,800のレストランからのエントリーがあり、申し込むには、以下の必要書類を全て英語での提出を求められます。


1. 現在のレストランのリスト(※ホテルなど複数のレストランがあるような施設でも1レストランのリストに限られる。)

2. レストランのディナーメニュー

3. レストランのレターヘッドに、ワインの保管条件、在庫、価格、さらにこちらのワインプログラムに関係があると思われる情報を記載。

4. レストランの写真(最大3枚)※オプション

5. ワインディレクター、又はソムリエの顔写真 ※オプション


これらを記載した後、オンラインでも紙面での郵送でも、どちらからでも申し込める。



審査後は3段階で評価されます。


【評価】

Award of Excellence

90種類以上のアイテム数をセレクトしており、価格も含めてレストランのテーマにあった厳選された高品質な生産者のワインを品揃えしている。目の肥えたワイン愛好家を満足させるのに十分な選択肢を提供。


Best of Award of Excellence

350種類以上のアイテムをセレクトしており、優れたプレゼンテーションとともに幅広い産地からのワイン、トップ生産者ワインのヴィンテージ毎の品揃え。サービスチームやレストランにしっかりコミットメントしており、ワイン愛好家のディスティネーションにふさわしいワインリスト。


Grand Award

ワインプログラム品質に妥協のない情熱的な献身を示すレストランに与えられる、最高の賞。1,000種類以上の品揃えがあり、トップ生産者ワインのヴィンテージ毎の品揃え、成熟したヴィンテージワインのコレクション。お食事のメニューともしっかりと調和が取れており、最高レベルのワインサービスを提供するレストラン。

※2021年の評価で97レストランが受賞。日本国内ではゼロ。)


その他、受賞したレストランは毎年の8月号のWine Spectatorに掲載されまして、

以下の情報もHP上で記載してもらえます。

1. Wine Director/やSommelier

2. ワインリスト(エリアやタイプも含めた)強み

3. セレクションの数やトータルのストック数

4. 読者のための3段階の価格帯カテゴライズ

5. 持ち込みについて

6. 料理のタイプと価格


Restaurant Awardにエントリーするにあたり、ベンチマークすべきレストランが必要と判断し、NYを始めとするいくつかのレストランをいくつかリサーチしました。


Eleven Madison Park

(NYの三つ星であり、Grand Awardを保持している。)

Chef: Daniel Humm

Wine Director: Watson Brown


2021年5月、肉や魚を使わない植物性ベースのコースを提供する。と発表。

5,000種類、22,000本のストック数。世界最高峰の圧巻のワインリスト。

酒精強化や甘口まで含めると、グラスで飲めるワインが70種類以上。

ワインリストの並び順で見てみますと、ハーフボトルから始まり、スパークリングワインよりも先にNY Wineのページが先に記載されている。(※フランスの地方のレストランでも、地元で作られるワインからページが構成されることが多い。)

NY WineのページではFinger LakesのHermann J. Weimer(ハーマン・J・ウィーマー、輸入元 GO-TO WINE)を中心にバックビンテージなどを揃えている。

世界中のワインが集結している印象。

※梁世柱さんが言う、見るべきワインリストとしても知られているレストラン。


Per Se

(NYの三つ星であり、Grand Awardを保持している。)

Owner: Thomas Keller

Wine Director: Michel Couvreux


1,900種類、9,000本のストック数。

フレンチ・ランドリーを合わせて2つの三つ星をもつ唯一の米国人オーナーシェフの経営するレストラン。

酒精強化や甘口まで含めるとグラスで飲めるワインが35種類以上。

とにかく見やすいリストであった。

シャンパンを例に例えると、

マルチヴィンテージやヴィンテージなどの大きなカテゴリーがあり

①生産者→②キュヴェ名→③畑名→④格付けという順で表記されている。

例)Jacques Selosse, Extra Brut, “ Les Carelles,” Le Mesnil-sur-oger, Grand Cru, (02,2020)NV


※国内外の多数の有名レストランやホテルのワインリストを見て感じたのは、上記の番号順で統一されているレストランが少ないという点。意外にみんなバラバラだったりするもので、シャンパーニュやフランスワインは「生産者」から表記していたのに、ニューワールドになると「②キュヴェ名」からスタートさせているなど。


また、デゴルジュマンの表記まで記載されているのは、ワインに詳しいお客様にとってはかなり有益な情報だと思う。スタッフに無駄な質問もしないで良いし、悩む時間が減るのは有り難い。

Per Ceの統一感は凄く参考になりました。


Geranium

(コペンハーゲンの三つ星であり、Grand Award)

Owner Chef: Rasmus Kofoed

Wine Director: Soren Ledet


3,450種類、11,500本のストック数。

2021年のWorld’s 50 Best Restaurants No.2、

2022年からは「ミートフリー」と公表している。

シェフのラスムス・コンフォード氏は、ボキューズドールでも、1位、2位、3位を全て受賞した唯一のシェフ。

共同経営のマネージャー兼ワイン・ディレクターのソーレン・レドット氏はMaster Sommelier Candidate, Advanced Sommelier CMS。


今一番行ってみたいレストランの一つ。

王道を進みながら、シェフ、ソムリエともにコンペティションやMSに挑戦などを行いながら、このワインリストの完成度には憧れを抱きます。

全てのDRCワインを合わせるとその数なんと50種類以上!!!

ぜひ、ご覧頂きたい。




【新カテゴリー?】

数カ所のワインリストを見て、「Sustainable Wine[selections]」というタイトルでアイテムを纏めているレストランがあったことにも気づいた。

どのようなワインが並んでいるのか見てみよう。


Champagne

Waris-Larmandier


White

Alice et Olivier de Moor

Domaine Tempier

Zind Humbrecht


Yellow

Jean François Ganevat


Orange

Gravner

Radikon


Rose

Lucy Margaux


Red

Frank Cornelissen

Dard&Ribo


*カリフォルニアのレストラン Brennan’s [Grand Award] 

「Sustainable selections」というカテゴリーから一部抜粋。



日本でいう「ナチュラルワイン」、と言われる分類に入ると思われるワインがラインナップ。


さらに、世界のレストランをリサーチして気づいたことは、

①世界を牽引するレストランがヴィーガンやミートフリーという方向に進んでいる。

②そもそも、資金力が違う?

③ワインリストの左側にBIN Numberが記載されている。

(国内では、私がネット上で見る限りではコンラッド東京ぐらいでした。)

※MSではテキストブックに記載されているセオリー。

④sustainableのカテゴリーがあった。


以上のような要点も含めて、オーナーやシェフ、経営に食のトレンドと様々な影響を受けるであろうワインセレクション。現場のソムリエ視点で、「未来のワインリスト」について考えていきたいとおもいます。



前編の最後に、sustainableカテゴリーに属するワインをレヴュー。


アレクサンドル・バンがやっぱり好きです。



生産者:Alexandre Bain アレクサンドル・バン

ワイン名:Pierre Precieuse/ ピエール・プレシューズ

葡萄品種:Sauvignon Blanc / ソーヴィニヨン・ブラン

ワインタイプ:White / 白

生産国: France / フランス

生産地:Loire / ロワール地方

ヴィンテージ:2018

インポーター:野村ユニソン

希望小売価格:5,500円(税込)


以下、有名なAOCに対するお話や、テロワール哲学に情報はインポーターのHPからご覧ください。



1日目(6月12日)満月2日前

アプリ:When Wine Tastes BestではNo

開けたての、最初にグラスに注いだ時のテンションに生命力を感じる。

集中したレモンやグレープフルーツの薄皮のような苦味を連想させるような香りに、口に含むと力強いアタック。

引き締まった酸に力強い余韻。

全体的に硬い印象。過去のヴィンテージのものよりも、ストラクチャーがしっかり感じられ、以前まで受けていた「丸みのあるネクターのような柔らかさはない。」


2日目6月13日)満月1日前

アプリ:When Wine Tastes Bestで前日に続き同じくNo

小慣れた印象へ。

ラフランスのような香りと、小石のような鉱物っぽいニュアンスを受ける。

口の中のストラクチャーは全体的に開いてきましたが、まだまだ硬く力強いです。

飲み頃はいつなのか?

個人的な印象としては、後10年寝かせられるストックスペースと資金力をつけたいです。笑


石原在庫、残り1本。涙

私のエビデンスのない感覚的なテイスティングコメントが誰かのお役に立つのかどうかはわかりませんが、ご参考になれば幸いです。


ちなみに2022年5月某日、京都『KOKE』のシェフソムリエ大山さんにペアリングで提供して頂きました同じワインは、最高に飲み頃で美味しいと感じました。笑


ワインって一生分からない生き物だから面白い。

エビデンスないですけど、ワインって注ぐ人によって味が変わるって本当なんですよ。



〈ソムリエ プロフィール〉

石原 大輝/ Daiki Ishihara

1986年 沖縄生まれ


バーテンダーからキャリアをスタートして福岡と東京のレストラン、そして地元の沖縄に戻りホテルやレストランでシェフ・ソムリエやマネージャーとして研鑽を積む。

2018年 Le Monde [Freelance Sommelierとして独立] 、J.S.A. Senior Sommelier取得。

2019年 A.S.I. Diploma取得。

2021年3月 自身がオーナーを務めるDowntown Donuts(ワインが飲めるドーナツ屋さん)が

にオープン。



〈Le Monde〉

Freelance Sommelier、Beverage consultantとして活動。

沖縄のレストラン、ラグジュアリーホテル、鮨屋、ステーキショップやワインショップという様々なジャンルの店舗のワインリスト作成、ペアリングの提案、スタッフ教育にマネージメントなどを行う。沖縄のレストランやドリンクシーンをワールドクラスにする事を理念として日々奮闘中。


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