本シリーズの第一回で書いた通り、文化としてワインが根付いていない日本では、地の食である日本料理と、日本で造られたワインの間に、特別な関係性は極めて生じにくいと言えます。
ペアリングの真髄にとって重要なのは、冷静さであり、素直さです。
本シリーズの第五回となる今回は、長野県で主に栽培されている「竜眼」を題材にして、ペアリングの可能性を検証していきます。
竜眼はいまだに謎の多い葡萄品種で、明治初年に中国から長野県に渡ったという説や、奈良時代にまで遡れるという説もあったり、一時期は甲州の親品種と考えられていたり(現在は遺伝子調査によって否定されました)、中国にある同名の「竜眼(LONGYAN)」と同じはずなのですが、形態学的には異なる部分も非常に多かったり、そもそも中国原産ではなく、カスピ海周辺が起源ではないかと言われていたり、などなど、どうにもすっきりしません。
日本国内での名称も、竜眼、龍眼、善光寺ぶどう、善光寺竜眼、長野竜眼など統一感があるようで無いという微妙な状況です。(善光寺とも関連があるのですが、その話をすると長くなりますので割愛します。)
さて、そんなミステリアスな魅力漂う竜眼ですが、日本に根付いたぶどう品種としても、ペアリングを考える上においても、非常に重要なポイントが一つあります。
そう、実は竜眼は、一応亜種扱いとはいえ、れっきとしたヴィティス・ヴィニフェラ種なのです。つまり、古来からワイン造りに多く用いられてきたヨーロッパ・中東系ぶどうということです。(竜眼は中国では食用葡萄として使われる方が多かったようですが。)