本シリーズの第一回で書いた通り、文化としてワインが根付いていない日本では、地の食である日本料理と、日本で造られたワインの間に、特別な関係性は極めて生じにくいと言えます。
ペアリングの真髄にとって重要なのは、冷静さであり、素直さです。
本シリーズの第七回となる今回は、北海道で開発された「山幸」(やまさち)を題材にして、ペアリングの可能性を検証していきます。
山幸は、北海道の池田町にある十勝ワイナリー(日本では初の自治体が運営しているワイナリー)が「寒冷地に適した葡萄」として開発に携わった葡萄です。
親にあたる葡萄は、片方がフランスで開発されたハイブリッド品種のセイベル13053を基にして1970年に誕生した「清美」、そしてもう片方は日本の在来品種である「山ぶどう」です。
山幸が完成したのは、清美の誕生から36年後。山幸の6年前に誕生した「清舞」を含めれば、なんと20,000回を遥かに超える試験栽培が繰り返されたそうです。
十勝の期待を一身に背負った山幸は、2020年、OIV(国際ブドウ・ワイン機構)に、甲州、MBAに次ぐ3番目の日本産国際品種として登録されました。