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復活の起点 <ギリシャ・ナウサ特集:導入編>

アラビア半島を飛び立った私は、砂海に浮かぶ星々のように小さなギザのピラミッド群を眼下に収め、荘厳なアクロポリスなる霊峰オリンポスを横切りながら進んだ。


古代の神秘を巡るその道のりはまるで、けたたましいエンジン音を撒き散らす無機質な巨塊ではなく、優美に羽ばたく大鷲の背に乗っているかのように軽やかで、ずいぶんあっさりと、私は幻想の世界に没入していった。


そして、アレクサンドロス大王が治めた地に降り立った私は、強引に現実世界へと引き戻された。私が向かった先は、皆が思い浮かべるような、碧い海に囲まれた美しい島々ではない。そこは、激しく隆起する大地と混じり合うように拓かれた小村が点在する山の国、マケドニア。ギリシャでありギリシャではない、歴史的、文化的にも極めて独自性が強いこの地には、世界中が注目する一つの小産地、ナウサがある。




東から西へ 〜古代ワイン文明の中心地ギリシャ〜

ギリシャにおける最も原始的なワイン造りの痕跡は、少なくとも紀元前4,000年、おそらくは4,500年ごろまで遡れると考えられている。どちらにしても、ギリシャがワイン産地として最古のグループに属しているのは間違いない。ジョージアのコーカサス地方、トルコのトロス山脈、イランのザグロス山脈北部のいずれかで、8,000年以上前に世界で初めて誕生したと推測されるワイン文化は、ティグリス・ユーフラテス川を伝ってメソポタミアを経由した後、フェニキア人によって地中海のクレタ島へと渡った(エーゲ海の島々に最初に渡ったという説もある)と考えられている。


しかし、古代ギリシャにおいて本格的な葡萄畑の拡大が始まったのは紀元前3,300年ごろから始まる青銅器時代に入ってからで、より洗練されたワイン造りの技法はそのさらに数百年後、ナイル川を利用した通商で栄華を極めていた古代エジプトから学んだ


古代エジプトの技術、そしてワインと神々との繋がりは、クレタ島を中心としたミノア文明へと伝えられ、後のミケーネ文明(紀元前1,600年頃から)へと受け継がれた頃には、文化的、宗教的、経済的にワインが極めて重要な役割を担うようになっていた。


特にこの時代には、線文字Bと呼ばれる古代文字で葡萄畑、ワイン造り、ワイン商に関する詳細と共に、ギリシャ神話に登場するディオニソスをワインの神とする明確な記述が、数多くの石板に刻まれた。


紀元前750年頃(アルカイック期)になると、古代ギリシャは地中海の覇者として、積極的に領土を拡大し始めた。最初期の植民地であるシチリア島を中心とする南イタリアや、マルセイユ近郊の南フランスでは、自生していた葡萄からギリシャ人がワインを造り始めた。現在ワイン産業の世界的中心地となったフランス、イタリアのワイン造りは、ギリシャ人が築いた礎の上に発展していったと考えられているのだ。

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