イタリア料理といえば、パスタとピッツァが代名詞となるが、その他多種多様な郷土料理の世界は実に奥深く、驚くほど美味な料理に彩られている。
日本人にとっては、全体的に少々塩分強めなのが難点とは言えるものの、塩味を酸味でしっかりカットできるワインがセットになった料理体系なのだから、こればかりは仕方ない。
今回ペアリング研究の題材にしたいのは、イタリア北部ロンバルディア州(ミラノ)の郷土料理である、オッソ・ブーコ。
オッソ(骨)、ブーコ(穴)という奇妙な名前の料理だが、主食材となる仔牛のスネ肉を調理した際に、中央の骨髄部分が縮小して「穴の空いた骨」になることから由来している。
イタリアにトマトが到来する前から存在して料理であるため、大元のオリジナルレシピではアンチョヴィが味付けのベースとなっていたようだが、現代ではトマト、白ワイン、香味野菜類、ブイヨンを合わせて蒸し煮にして、グレモラータ(パセリ、レモンの皮、ニンニクで作る緑色のペースト)を添えるのが定番となる。
イタリア郷土料理の中でも比較的良く知られたものの一つであり、一般的にクラシックペアリングとされているのは、ロンバルディア州のワインではなく、お隣ピエモンテ州のバローロやバルバレスコだ。
しかし、そもそも仔牛のスネ肉が比較的安価な食材ということもあって、オッソ・ブーコは必ずしもレストランの格式高い料理というわけではなく、どちらかというと家庭料理やトラットリアの範疇にあるカジュアルな料理。そして、そこに高貴なバローロやバルバレスコをもってくるのは、個人的に少々料理にとって荷が重く感じもする。
ピエモンテ州のネッビオーロで合わせるのであれば、むしろLanghe Nebbioloくらいのカジュアルでソフトなワインの方がしっくりくる。
もちろん、ロンバルディア州のネッビオーロ(キアヴェンナスカ)主体ワインであるValtellina(この場合は、Superiore格をお勧めする)で合わせるのも良い。
さて、今回のペアリング研究室では、いつものロジカルなものではなく、あえて大雑把な
アプローチをとってみようと思う。