葡萄品種から探るペアリング術シリーズは、特定の葡萄品種をテーマとして、その品種自体の特性、スタイル、様々なペアリング活用法や、NG例などを学んでいきます。
今回は、リースリングをテーマと致します。
また、このシリーズに共通する重要事項として、葡萄品種から探った場合、理論的なバックアップが不完全となることが多くあります。カジュアルなペアリングの場合は十分な効果を発揮しますが、よりプロフェショナルな状況でこの手法を用いる場合は、ペアリング基礎理論も同時に参照しながら、正確なペアリングを組み上げてください。
リースリングのスタイル
リースリングの醸造方法は世界的に一貫性(シャルドネやソーヴィニヨン・ブランほど多様ではない)が見られますが、テロワールには極めて敏感であり、品種自体の個性も強く出ます。リースリングの醸造過程で、新樽が登場することは極めて稀です。もちろん例外はありますが、バリック熟成をしたリースリングの成功例もまた、極めて稀と言えます。リースリングの大多数は、(産地を問わず)ステンレスタンク、コンクリートタンク、古い大樽といった、ワインに対して積極的な風味付けをしない容器が用いられています。またマロラクティック発酵をすることも滅多にありません。リースリングは酸度が高く(pH値が低い)、酸化にも弱いため亜硫酸を適宜使用することが一般的であり、これらの要素はマロラクティック発酵を阻害してしまうからです。
また、リースリングは非常に幅広い残糖度のヴァリエーションがあることが、良く知られています。「無条件甘い」というイメージが根強く残っていますが、完全に間違った認識です。リースリングは極辛口〜極甘口のどの段階でも、テロワールの条件が合っていれば、全く隙のないワインとなります。
リースリングの産地
リースリングを積極的にペアリングに用いていくためには、どの残糖度のスタイルが、どこで造られているかを把握することが何よりも重要です。以下にまとめましたので、ぜひ参考にしてください。なお、以下に挙げた産地は、筆者がリースリングの銘醸地と確信している産地に限っています。どこの産地にも例外的に素晴らしいリースリングを手がける作り手はいるものです。また、辛口が主体の産地でも、僅かに甘口や極甘口が造られていることも多々ありますが、表記しているのはそのスタイルがより多く確認できる産地に限っています。