La Biancara (Angiolono Maule), Sassaia 2022. ¥3,700
約12年前の年末、私は大ピンチに陥っていた。
当時NYのワイン業界では無名に等しかった私を、なぜか新プロジェクトのワインディレクターとしてヘッドハントした、今は亡き大恩師でもあるシェフ、デイヴィッド・ブーレーは、紛れもない天才中の天才だったが、いわゆる「サイコ」としても知られていた。
無理難題を突如押し付けてくるのは日常茶飯事、その荒波をなんとか乗り切りながらの仕事は、今思えば刺激的で充実したものだった。
ところが、年末が近づいてきたある日、ブーレーは私に「Mission Impossible」と思えるような超難題を放り投げてきた。
当時働いてレストランは、フレンチの要素を取り入れた高級和食店。
そして、和食店の年末年始といえば、おせち料理にも関連した難食材や料理が多く出てくる。
普段なら、そういう料理に対するペアリングは日本酒でかわしてしたのだが、ブーレーは、「子持ち昆布のお浸し」というスーパーワインキラーに対して、ワインでのペアリングを要求してきた。