一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのがSommeTimes’ Académieシリーズ。初心者から中級者までを対象としています。今回は、一般的な赤ワインの醸造フローを学ぶシリーズの第四弾となります。熟成から瓶詰めまでの流れを追っていきます。
なお、日本のワイン教育においては、醸造用語としてフランス語を用いるのが今日でも一般的ですが、SommeTimes’ Academieでは、すでに世界の共通語としてフランス語からの置き換えが進んでいる英語にて表記します。また、醸造の様々な工程に関しては、醸造家ごとに異なる意見が散見されます。本シリーズに関しては、あくまでも「一般論の範疇」とご理解ください。
試験後に忘れてしまった知識に意味はありません。ワインの勉強は、難しい外国語由来の単語との戦いでもあります。そういった単語をただの「記号」として覚えることにも、意味はありません。その単語が「何を意味するのか」を知ってこそ、本来のあるべき学びとなります。SommeTimes’ Académieでは、ワインプロフェッショナル、ワイン愛好家として「リアル」に必要な情報をしっかりと補足しながら進めていきます。試験に受かることだけが目的ではない方、試験合格後の自己研鑽を望む方に向けた内容となります。SommeTimes’ Viewをしっかりと読み込みながら進めてください。
9. 熟成(Aging)
タンクや樽などで行われる熟成は、ワインを育てるという意味合いから、フランス語では「育成」を意味するElevage(エルヴァージュ)という言葉が用いられてきました。酸素透過率の高い容器(樽やアンフォラ)の場合、熟成中のワインが徐々に蒸発してしまう(天使の分け前、Angel’s Share)ため、定期的に補酒をして、容器内にワインをしっかりと満たし続けるようにします。この補酒の作業のことをフランス語でOuillage(ウイヤージュ)と呼び、英語での呼び名はUllage(アレージ)となっています。
SommeTimes’ View
育成期間中は、重力による自然な清澄作用、フェノール類の重合による沈殿作用によって、色調を安定化させることができます。この作用は、酸素透過率の高い容器(樽)の場合、酸素との接触によって緩やかに酸化しつつ、より強い効果を発揮します。また、補酒や温度管理を正しく行えば(酸化は高温環境下で促進される)、ネガティブな酸化は極限まで抑えつつ、より複雑な風味を得ることができます。この微小な酸化効果は、樽のサイズが小さいほど強く、大きいほど弱くなります。つまり、小樽の方が早く育成させることができるということになります。また、古い樽になればなるほど酸素供給力が低下していくため、新樽の方が早く育成できます。アンフォラは酸素との接触を促進させて複雑さを高めつつも、ワインに風味を足すことはほとんどないため、比較的ニュートラルな特性とされています。酸素透過率の低い容器(ステンレスタンク、コンクリートタンク等)の場合、風味への直接的な影響は少なめとなります。