Laurent Bannwarth, Riesling Bildstoeckle 2019.
ソムリエとしての修行を始めて間もない頃。今から20年ほど前の話だ。
私は順当に、“当時は”ワイン界の中心にいたフランスの銘醸地、つまりブルゴーニュ、ボルドー、シャンパーニュから学び始めていたが、ワインの教科書を読み進めるうちに、とある産地に強く興味をもった。
フランスのアルザス地方だ。
理由は大したものではない。フランスなのにドイツ語が飛び交うだとか、度重なる戦争でフランス領とドイツ領を行き来したとか、ワインのボトルがドイツと同じ細長いタイプだとか。
その背景にある悲惨な歴史と理不尽に奪われた命には興味をもたず、ただただアルザスの特異性という結果だけが私を惹きつけた。